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札場靖人の「あなたのパワースポットはどこ?」 第25回/橋本さんのルーツは笛や鉄砲がお家芸だった

2010hasimoto01.jpg橋本[橋元・橋下・橋頭・端本・端元・箸本・觜本]
橋本さんのルーツは笛や鉄砲がお家芸だった

「それでね、和宮は結婚したその夜は一晩中笛を吹いていて、家茂さんに指一本触れさせなかったのよ」。いつもの縄暖簾をくぐると、居酒屋の女将が丁度そんなことを客の誰かに向かって話しているところだった。
私はカウンターの席にもぐりこみながらビールを注文し、よせばいいのに女将の話に口を挟んでしまう。「和宮の実家の橋本家は、横笛をお家芸としていた家系だから、和宮も相当笛は上手いはずだよ」。女将は、ヘエーといった顔つきをしながら私にビールを注いでくれる。私はビールを一口飲み、「橋本家のお家芸といえば、鉄砲もあるんだよ。勿論和宮の実家のお公家さんの橋本家とは違う流れの橋本さんだけどね。信長は橋本家の鉄砲があったから天下が取れたともいえるんだ──」。ところが、私が話している途中に居酒屋の女将は、「前から和宮は、従兄弟の橋本ナントカさんと恋仲だったんだと思うのよ、可哀そうよね、和宮は──」と、話をまた和宮に戻すのであった。

──和宮親子(ちかこ)内親王は、典侍(ないしのすけ)の橋本経子を母とし、弘化3年(1846)仁孝天皇第八皇女・孝明天皇の異母妹として生まれた。だが、和宮が生まれた時はすでに仁孝天皇はこの世になく、和宮は従兄弟の橋本実梁(さねおみ)らに囲まれ、母の生家である橋本家で養育された。いま、京都御所と迎賓館に挟まれた静かな林の中に、「皇女和宮生誕の地 橋本家跡」という碑がぽつねんと立っている。

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京都御所の東に位置する橋本家跡。橋本家跡 (皇女和宮誕生の家)という駒札が設置されている。すぐ南側には学習院跡も


数多い橋本姓の中でもっとも著名なのが、この、和宮に繋がる藤原北家西園寺流の橋本氏で、代々笛で朝廷に仕えた。鎌倉時代末期、西園寺公相(きんすけ)の四男実俊(さねとし)を祖として創設され、孫の橋本実澄(さねずみ)の代から橋本の家名となった。

また、和泉国日根郡橋本を発祥とする橋本氏に、橘氏を出自とする和田氏族と楠氏族がいる。山城国綴喜(つづき)郡橋本を発祥とする橋本氏は清和源氏流、他に、因幡国邑美(おうみ)郡橋本を発祥とする橋本氏、上総国相馬郡を発祥とする相馬氏族の橋本氏、佐々木氏流の橋本氏、備前、美作の橋本氏など多彩。

そうそう、尾張国中島郡を発祥とする橋本氏のことを忘れるところだった。
その昔、尾張国の国府があった愛知県稲沢市片原一色に橋本氏代々の居城であった片原一色城跡がある。現在の神明社境内一帯に築かれていたという片原一色城は、応永年間に橋本伊賀守によって築城され、戦国時代、織田信長に仕えた五代城主の橋本一把(いっぱ)は、信長の鉄砲師範を務めたという。さらに、一把の子道一(みちかず)は、豊臣秀吉に仕え、朝鮮の役では鉄砲頭も務める。元和元年(1615)、一国一城令により廃城。

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片原一色城跡


橋本という名称からは、茨城県桜川市岩瀬の橋本城跡、栃木県下野市橋本の橋本城跡など。また、京都梅宮大社の橋本氏は橘諸兄の後裔と言われ、兵庫県神崎郡福崎町山崎の二之宮神社には、楠木正成の一族橋本四郎左衛門尉忠純という人物の名が残っているので、訪れてみるのもいいだろう。さらに、京街道の宿場の一つとして栄えた橋本宿を訪れ、橋本宿に本陣を置いた会津藩、新選組、見回組、遊撃隊などの幕府軍と官軍の激戦の跡を歩いてみるのもいい。橋本宿には橋本砲台跡も残り、昔の面影が色濃く残っている。
橋本姓は福島の大姓十位、鹿児島と沖縄を除いてほぼ全国に分布している。

家紋は釘抜、三つ柏、巴、四つ目結(めゆい)、蛇の目、横木瓜。西園寺流は右三つ巴、清和源氏は抱き沢瀉(おもだか)、十六菊、唐花(からばな)など。
「それでね」と居酒屋の女将は話し続ける。「和宮の恋人の橋本ナントカさんは、和宮が家茂さんのとこにお嫁に行った時、彼女を守って一緒に江戸に行ったのよ、可哀そうよね」と言うのであった、橋本ナントカさんというのは、橋本実梁のことで、後、勅使東海道先鋒総督として江戸城に入り、徳川方に対しての処置を言いわたした人物である。

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